茅ケ崎市・赤羽根「今日の生き物記録」716 2022.6.1
自然界の青色
道端でツユクサ花びらの青色を観察しながら、青色に思いを巡らしてみた。
青空が好きで、ツユクサ花びらの青色が好きで・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最も好きな色は? と問われたら「ルリボシカミキリの青」と答えるだろう。
1枚目の写真は、散歩中に見かけたツユクサ花びらの青色。この花の色素は、古くよりアントシアニン系と言われていたが、近年の研究により6分子ずつのアントシアニンとフラボンが2個のMg2+を介して集合した超分子による発色だということが明らかになった。
2枚目の写真は、モンゴル草原で調査中、上空を見上げた時の青空である。ウランバートルからモスクワに向けてMIAT(モンゴル航空)が飛行機雲を発生しながら飛翔中の光景。
空が青く見えるのは、日中に太陽光が大気を通る距離は短く、赤系統の光は大気中をほとんど散乱されず直進するが青系統の光は散乱され、私たちの目に飛び込んでくるからである。
3枚目の写真(出典:昆虫エクスプローラ)は、最も好きなルリボシカミキリの青色である。この昆虫の名前を知ったのは、福岡伸一の著書「ルリボシカミキリの青」と出会った時であった。本書の中に、次の一文がある。「ルリボシカミキリの青色は、どんな絵の具をもってしても描けないくらいあざやかで深く青い。こんな青は、フェルメールだって出すことができない。その青の上に散る斑点は真っ黒。高名な書家が、筆につややかな漆を含ませて一気に打ったような二列三段の見事な丸い点。大きく張り出した優美な触角にまで青色と黒色の互い違いの模様が並ぶ」
ルリボシカミキリの青色も、標本にしてしまうと元の色が消えてなくなってしまう。やはり、リアルな青色がベストだ。生きているものにしか現れない青色。
そう考えると、ツユクサの青色も青空もルリボシカミキリの青色も、移ろいやすく、これを長く留めておくことは難しい。これらの色は、自然界の中で生きている時にしか見られないものなのだと思いを巡らしながら、いつもの散歩道を歩き続けた。