アリの仕事―集団採餌行動―
林縁道にアミメアリが、ダンゴムシの死体に群がっていた。アリの行動を見ていると互いに連絡とっているように見えて興味深い。
別の道では、クロアリが協力してミンミンゼミを運んでいた。このセミ前脚を動かして、抵抗しているのがわかる。
貴重な場面を観察・記録した。
アリの採餌行動が、これまで広く知られている化学走性だけでなく視覚情報や記憶にも依拠し、これら複数の因子の精妙な組み合わせで行動決定を行っていることを明らかにしている(Ogiharaら,2015)。
また、数理モデルでは、アリの化学走性にゆらぎ(エラー)の効果を付与し、採餌効率とゆらぎの関係を調べた結果、ある給餌環境の変化に応じて、「最適採餌集団」が、同等のエラーをもった「一様集団」から、高いエラー率をもったアリとエラーがほとんどないアリの「2極混合集団」に鋭く転移することも明らかにされている(Nishimoriら、2015)。
さらには、微小RFIDチップを使った多数個体の個別行動履歴計測の研究結果が紹介されている。具体的には、集団としての採餌ダイナミクスを分析し役割分担の非定常性を説明。とくに、従来広く信じられてきた日齢に応じたコロニー内採餌役割分担の漸進的変動(=「逆年功序列」:齢をとるにつれて採餌などの外働きに出る)、という描像に関して実データを示しながら否定的な方向から検証し、採餌に関する「役割分担表」は時間に応じて大きくスイッチングすることを示した(Yamanakaら、2015)。
学校現場において、このような話題源を提示しつつ、アリの集団行動教材の「今日の一品」として、この場面を活用できそうですね。